西牟田 靖 著 『本で床は抜けるのか』

d0331556_1181939.jpg この本は自分の蔵書の多さでアパートなどの床が抜けたとか、著者のようにその蔵書の多さで床が抜けるのではないか、という恐れを感じながら生活している人たちが、その本をどのように処理しているのかを書いた本である。


 本が増えすぎてどうするか、という切羽詰まった問題の解決法探しを基点にして始まったのだが、本を巡るこの旅である。


 私も床ではないが、押入の上の段が落っこちたという先輩を知っている。この先輩の奥様はフォトデザイナーで、その仕事の資料として雑誌「家庭画報」をかなりの冊数押入に保存していたという。
 夜中に押入から大きな音がして、中を覗いてみると押入の上の段が落っこちていたという。
 この話を聞いて“だろうな”と思ったものである。とにかく「家庭画報」は重いのである。写真ばっかりの雑誌だから仕方がない。
 今はどうか知らないが、私が本屋で働いていたとき、この「家庭画報」一つの梱包で5冊しか梱包されていなかった。それだけこの雑誌は重いのである。
 この本によると、本の積載荷重の限界値は、木造建築は一平方メートルあたり180キロ、一般RC(鉄筋コンクリート造り)住宅などは同300キロ、図書館は600キロだそうだ。
 数字で表されるとそれがどれぐらいの冊数になるのか、実感がわかない。出来れば具体的な形で示してくれれば有り難かった。


 本の存在感は諸刃の剣である。


 どういうことかと、その説明があるので抜き出してみる。


 物体として本の存在感は読者に読む醍醐味を与える。本を手に持ち、ページをめくりながら、目を通していくから読書という体験は豊かになる。だが、その物体性故に、床がぬけそうになったり、居住空間が圧迫されたりもする。さらに、部屋に閉じ込められたり、果ては凶器となり怪我をしたりとあらゆる厄介事を抱え込んでしまうのだ。


 本が凶器にもなるということである。例えば東日本大震災のとき、国会図書館では180万冊が床に落下したという。それをかたづける作業に延べ180人でに8日間かかったという。
 あの地震の後私も自分の本棚が心配であった。幸い落下した本はほとんどなかった。多いときは2,500冊近く本棚にあったが、その年の前にかなりの冊数を古本屋に売りとばしていたので、棚から本が溢れている状態から解放されていた。それとこの本棚は壁面に作り付けであり、土台も本を置くということから頑丈に作っていたのも幸いしたと思われる。
 もし、本棚の本がほとんど落ちていたら、二階から一階へ降りる階段が使えなくなっていただろう。それを思うとゾッとする。
 また本棚が部屋の外、つまり玄関から二階に上がる階段の壁面にあるため、本を生活空間に置くことはない。必要な本を本棚から取り出して、読んだら元に戻せば居住空間が圧迫されることもない。
 今は本が以前のように増えなくなった。とにかく読む方に力を置いているので、ちょっと前みたいに気になる本があればすぐ買ってしまうことはしない。
 また好きな作家がほとんど物故しているので、新刊がほとんど出ないこと。さらに昨年から図書館を利用することが多くなったことで、昔と比べると本の量が増えなくなった。そして買って読んでつまらなかったら、すぐブックオフで売ってしまうことで、何とか均衡を保っている。
 このように図書館で借りた本、処分した本は、ここに書くことで、資料がデータとして残るので、本当ならもっと処分していいのかもしれない。ただやはり好きな本、お気に入りの本は手元に置いておきたいので、基本的にこの本棚に置く本はそういう本にするようにしている。

 著者は結局増えつづける本の処理を怠ったため、床が抜けるのではないかという不安から本を自宅に移動したりする。ただ自宅に置かれた本は、家族の生活空間を圧迫する。それを奥様が理解してくれているものと思っていたのが、そうではないことを知らされ、本が増えることで離婚まで発展してしまった。「自分のものでない、本という重くてかさばる物質に空間を圧迫され続けた者特有の疲れが実感としてこもっていた」と書く。
 その苦い教訓から、本当に手元に置きたい本だけを残し、後は業者に自炊してもらって、電子化することになる。
 まあそうするしかないだろうな、と思っていたが、本を裁断してスキャニングすることはたとえ個人でしようとも法律的に問題がある状況である。それでもやむにやまれずそうせざるを得ない現実をどうするかであろう。
 やはり増やさないこと。徹底的な断捨離を敢行することに尽きるのではないかと思う。
 問題は今蔵書としてある本、すなわち家族にとって「自分のものでない本」が私が死んだ後じゃまになる可能性がある。それを何とかしないといけないのだが、それは今後考えていこうと思っている。


西牟田 靖 著 『本で床は抜けるのか』 本の雑誌社(2015/03発売)
by office_kmoto | 2015-06-23 11:09 | 本を思う | Comments(0)

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