小路 幸也 著 『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード―東京バンドワゴン』

d0331556_7424462.jpg このシリーズも10年続いて、この巻で11巻となる。最初からずっと付きあってきた。
 このシリーズはネットで古本屋関係の推理小説を探していた時に知った。このシーリーズは厳密な意味で推理小説のカテゴリーに入る本ではないと思うのだが、何故かそこにこのシリーズが紹介されていた。まあ多少ミステリー的な要素もあるので、そこでくくられていたのだろう。
 最初に買った本屋も覚えている。上野駅にある明正堂であった。まとめて数冊買って、以来毎年この時期になると新しい巻が発売されるので、買ってきた。
 シリーズ1巻目は『東京バンドワゴン』とこの古本屋の店名(坪内逍遥が名付け親)が書名となっていて、スピンアウトの『マイ・ブルー・ヘブン』以外すべてビートルズの曲名を書名としてきた。

 結局この本を毎年楽しみにしているのは、“おとぎ話”として読んでいるからなんだと思う。店主勘一の亡くなった奥さんサチさんがまだあの世に行かずに留まっていて、進行役として話をすすめていく。
 話はいつも朝食の風景からはじまる。このシリーズも10年になるものだから、勘一がいつもの朝刊を読む姿に、我南人がiPadを操作してSNSをチェックする姿が加わるのも時の流れを感じる。10年前にはなかった光景だ。
 このように大家族である。みんながそれぞれ好き勝手に喋るものだから、会話がかぶっている。でもこうして家族一同集まって食事をし、家族が楽しんで生活して行く。その幸せを堀田家の周りにいる多少人間関係で問題がある人たちに、堀田家の家訓でもある<文化文明に関する些事諸問題なら、如何なる事でも万事解決>をもとに、“おすそわけ”していく。ちょっとしたおせっかいでもあるのだが、いやらしさがそこにはない。まさしく昔あったテレビのホームドラマであり、一昔前にあった近所づきあいなのである。そして彼等らがなんだかんだと言って新たな仲間となり、堀田家の人間関係に加わっていく。だから巻を重ねる度に人間関係が複雑になり、登場人物相関図がないと“誰だったっけ?”と毎度困惑することになる。
 テレビのホームドラマだから、話の内容もそれほど記憶に残らないが、それでいい。その時々ほのぼのとしている。
 毎度進行役のサチさんが、話ごとに締めくくる内容もいい。ひとつだけ書き出す。


 思えばわたした古本屋は花屋さんのようです。作家さんと編集者さんがそれぞれに土を耕し、種を蒔き、本という立派な花を咲かせたものの少しだけこちらにいただいて、一本一本の花に水をやり、また愛情を込めて丁寧にお店に並べます。
 何週間、何ヶ月、何年に何十年。長い長い月日をかけて、努力して、愛情を込めて、そうやって世に出た一冊の本でも、埋もれてしまうことは多くあります。
 それを、わたしたちはまた皆さんにお届けします。
 こんなに素敵な商売はないと、わたしも勘一も、皆そう思っているんですよ。


小路 幸也 著 『ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード―東京バンドワゴン』 集英社(2016/04発売)
by office_kmoto | 2016-07-09 07:43 | 本を思う | Comments(0)

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