平松 洋子 著 『彼女の家出』

d0331556_06074304.jpg この本のあとがきに、タイトルである『彼女の家出』のことが書いてある。『彼女の家出』とは現実から遁走して雲隠れしたくなるような折り合いの付かない現実の辛さ、あるいは毎日の生活で溜まる澱、加齢よる身体の変化に逃げ出したくなる年齢である自分を見出し、それを何とかしないといけない、と思うことである。


 下着の捨てどきは、怠惰な日常の捨てどき。ずるずる惰性で暮らしていると、知らず知らず澱が溜まる。垢がつく。それをそのままにしていたら、なにかが澱んでしまう。下着というものは、どうやらこまめに洗濯して清潔にしていればそれでいいというものでもないようだ。タイミングがやってきたら、思いきりよくきっぱり捨てて整理する。なにしろ、下着は自分の肌にいちばん近い。そのぶん、気がつかないうちに自分のありようにも微妙な影響があるのはとうぜんだろう。ほんとうをいえば、いちばんこわいのはそこではないか。(五秒ルール)


 だから、


 下着の捨てどきは、女の試金石である。(下着の捨てどき)


 日々の生活を振り返って、これまで生きてきた生き方の変化もそれはそれで自分を守るものであり、受け止め方であることを教えてくれる。結局自分とどう向き合うかになってしまう。その時の折り合いのつけ方、あるいはうっちゃり方を日々の暮らしを著者は言っている。


 諦めが早くなったのか、約束を違えられても、あまり腹が立たないようになった。いつのまにか癖がついてしまったのか。いやいや、違う。ものわかりがいいふりを装っているだけなのだ。余計ないざこざは避けたいし、なにより自分が嫌な気持ちを味わわないように耳を覆っているだけ・・・・・玉ねぎの皮を剥くようにして自分を剥いていったら、だんだん情けなくなってきた。(おとなの約束)


 転ばぬ先の杖というけれど、年を重ねるにつれだんだん思うようになってきた。転ばないはずがないのです。そのつもりなんかなくとも、転んだりつまずいたりするのは至極とうぜんなのである。いちばんのモンダイは、転んだ自分を受け容れかたのようである。(お湯のない風呂)


 そんな自分の中にさまざまな変化の中で、それでもいかにして日々過ごしやすい自分を見出していくか。普段排除することでも、時にはほっこりするために必要なものあるし、女性らしくファッション、食べものなどに楽しみを見出している。

 ときおりの無駄は、人生の処方箋である。あからさまな無駄、こっそりとした無駄、積極的な無駄。それらは甘いあめ玉として自分に与えることで、凝りがとれてユルむ。(無駄の効用)


平松 洋子 著 『彼女の家出』 文化出版局(2016/07発売)

by office_kmoto | 2017-03-23 06:09 | 本を思う | Comments(0)

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