ポストカード

 妻がスーパーのバナナを買ってきた時、販売員に「バナペン」なるものをもらってきたのを見せてくれた。なんでもバナナに一言書けるペンで、インクは食用酢で作られているので、害はないと書いてある。ペンを包装してある紙にはバナナの皮に「がんばって!」とあった。このバナナでも食べて、もう一踏ん張り、と励ますということみたいだ。最近こういうのが流行っているのだろうか。

 川本三郎さんが美術館などに行った時沢山のポストカードを買い、それで手紙を書くとあった。だからポストカードを集めていて、その中から、この人に出す葉書はどのカードにしようか、と考えるのは楽しい、とあった。
 私も美術館などで絵を見に行った時は、必ず数枚ポストカードを買う。買うのはいいのだけれど、ほとんど袋に入れっぱなしで、たまに百均で買ってきた写真立てに入れて、本棚に飾るぐらいだ。
 ふと気になったので、買い込んだカードがどのくらいあるのか、引っ張り出してみた。手元には二十枚くらいあった。ユトリロ、ゴッホ、ムンク、ブリューゲル、フェルメール、レンブラント、ラ・トゥールなどなど。
 これらを使って葉書を出すのもいいなあ、とは思ったが、出す相手がいない。文章を書くのは好きだから、相手を思いつつ何か書けるだろうが、もらった方は「なに、急に?」と戸惑うんじゃないか、と思ったりする。それに「重っ!」なんて思われたら、何も出来なくなる。せめて年賀状みたいに誰でも葉書を書く時ぐらいしか、人にものを書いて渡すことなどできない。
 今はSNS流行で、長々と書かれたものは敬遠されるような気がする。せめてバナナの皮に「がんばって!」と書くのがいいのだろう。簡単な一言添えることのほうが喜ばれるような気がする。なので出したポストカードはまた袋にしまうこととなった。でもたまにはこうして出して眺めるのはいいかもしれない。気分で部屋に飾るのもいい。
 そしてバナペンは孫にあげることになった。


by office_kmoto | 2017-06-05 06:05 | Comments(0)

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