閉館の時間

 夜8時頃図書館に本を返しに行く。こんな時間に図書館に行くことはなかったから、朝や昼とは違う光景を見ることができた。
 朝に行けば、新聞雑誌コーナーは年寄りに占領されているし、昼間も多くの人が雑誌や新聞を読んでいる。しかし今はがらがら。席も多く空いている。今日発売のスポーツ新聞が書見台にあるのだが、昼間など見ることが出来ない。それが各紙自由に見ることが出来る。もちろん普通紙も同じ。雑誌も読みたいものを手にすることが出来る。
 席が空いているので、バッグに入っている文庫を読むことにした。閉館まで1時間ちょっとある。でも本を読むより、このコーナーにいる人たちが気になる。週刊誌を椅子に置いて柱に寄りかかって寝てしまっているくたびれた老人。若い夫婦がベビーカーをそばに置いて、それぞれ好きな雑誌を読んでいるみたいだ。子供は寝ているのだろう。
 シックな服装の女性がファッション雑誌を複数抱えて歩いていた。歩いていった先は雑誌のバックナンバーを置いてある棚だった。ファッションの勉強でもしているのかもしれないと思わせるほど、落ち着いた雰囲気の女性であった。
 昨日までの新聞が束になったものをテーブルに広げ、せわしくめくる男性。
 奥の飲食コーナーから中学生らしい男の子が数人集まって、声を出しているのが聞こえる。ゲームをしているようである。おそらく昼間なら注意されるのだろうが、時間が時間だけに、館員も少ないし、利用者も少ないから、彼らに気に掛けないかもしれない。
 それぞれがそれぞれの夜の一部の時間をここで過ごしている。人数が少ない分見渡せるのでそれを感じることが出来る。
 こういう図書館っていいなあ、と思う。妙に落ち着いた時間が流れている。またこの時間に来たくなった。
 9時15分になると、館内に音楽が流れ始める。閉館を知らせるアナウンスが入る。それでも人は帰り支度をする人は少ない。

 いいいのかな。


 のんびりしているもんだ。


 そして5分前になると「蛍の光」が流れ、やっとあちこちで立ちあがる音が聞こえてくる。
 自分も文庫をバッグに入れ、階段を降りる。

 閉館の時間。閉店の時間。最終電車が出て駅のシャッターが降りる時間。客が利用者が帰るのを待つ館員、店員、駅員。これまで過ごしてきた時間は同じ雰囲気が漂う。いったんは終わり、すぐ朝になれば開く。それの繰り返しが毎日だ。繰り返されていれば毎日は間違いなく連続する。繰り返されなくなった時間も何度も経験してきただけに、その連続が確約されている安心感がそこにはあった。

 首が痛くなってきた。ずっと整形外科に通っていて、痛み止めの薬を朝晩飲んでいる。それを夕食後飲むのを忘れた。薬が効いているのか効かないのかよくわからずにずっと飲んでいたが、こうなると多少効いていたんだな、とわかった。


by office_kmoto | 2017-09-05 05:50 | Comments(0)

言葉拾い、残夢整理、あれこれ


by office_kmoto