川村 元気 著 『億男』
2018年 08月 03日
商店街で福引きをやっていて、一男は娘に福引きをやろうかと言うが、娘はそのために無駄なお金を使うことになるからと遠慮する。そんな時老婦人が福引き券を差し出してくれ、一男たちは福引きをやった。4等の宝くじ十枚が当たる。そしてその宝くじで3億円に当選した。
しかしその手にした3億円をどう扱っていいのかわからない。これまで大金を手にした人間が不幸になったことを知っている。そこで昔の友人である九十九に相談する。九十九はIT起業家となっていて、友人たちと起業した会社を売却し、10億円を手にしていた。しかし九十九は一男が手にした3億円を持って消えてしまった。一男は3億円を持ち去った九十九を探しに、九十九が一緒に起業した時の友人、十和子、百瀬、千住を訪ね、九十九の行く先を探す。
九十九が三億円とともに姿を消し、彼の行方を探し求めてきた三十日間。お金をめぐる冒険。悪夢のような三十日間だった。十和子、百瀬、千住と“億万長者のその後の人生”を目の当たりにしてきた。九十九とともに大金持ちになった彼らは、皆自分なりの「お金と幸せの答え」を見つけようとしていたが、それが一男にとっての正解だとは思えなかった。
一男はお金がなくて苦労し、人間は変わってしまうことを知っている。
お金がなくても幸せだ、というのがまやかしであることも皆知っている。
大事なのは富ではなくて心の豊かさだ、なんて嘘に違いない。もしそれが本当だとしたら“お金では買えない幸せのかたち”とやらを見つけた人に、もっと出会っていいはずだ。
まったくこの通りだと思うが、かといって大金を手にしたことでこれまでの人生観、生き方が変えられてしまうことも九十九や元の仲間たちを目にしたことで知らされる。
結局チャップリンが映画の中で言った言葉通り、
「人生に必要なもの、それは勇気と想像力と、ほんの少しのお金さ」
がいいようだ。
この本は著者が集めた名言、金言を駆使して、お金がなくても、あっても人は苦労させられるらしいことを伝える。
この本は映画化されるという。映画化するほどの作品とは思えないけれど、満ち足りなくても満ち足りても、限度を越えた生活は、どっちに転んでも不幸になるという、教訓的な話が好きな人がいるんだろう。あるいは大金を持っても必ずしも幸せになれるとは限らないという、貧乏人のひがみみたいなものが映画化させるのかもしれない。
川村 元気 著 『億男』マガジンハウス(2014/10発売)