〇荻原 魚雷 著 『中年の本棚』
2020年 09月 05日
この気持よくわかる。
最近は歳をとったせいもあるが、今の自分とほぼ同じ年齢かさもなければもう少し歳上の作家の書いたものしか、気持が揺れ動かない。若い作家も読んでみてもいいのかもしれないが、とにかく触手が動かない。
読む本に、「そうだよなあ」という感情移入が出来る本が心地良い。気がつけばそんな本ばかりここのところ読んでいる。若い頃には思いもつかなかったことだ。
ところでこの本で言う「中年」とはどのくらいの年齢層を言うのだろうか。
NHK放送文化研究所によるアンケート調査の集計結果から、中年とは40.0歳から55.6歳迄のことらしい。
しかしこの著者の中年設定のおしりはせいぜい50歳迄を設定しているようだ。自らも50歳になって中年と呼ばれる世代を超えたと言っている。
で、この本はその中年を扱った本を紹介する。それは中年はどういう変化を心身共に起こすのか、そしてその変化の対応をそれぞれの本から著者自らの経験を踏まえて解説する。
「徒労感」、「限界」、「大きな方向転換が難しい」、「自分の残り時間が気になる」「余生」、「バランス感覚」など本文にあるが、いずれも言葉の先に「人生」を付ければ、この世代が置かれている状況がわかってくるようだ。
もっとも私はとうに中年を過ぎてしまっているが、今でもこれらの言葉に頷いてしまうのは、中年からずっと尾を引いているということなのか。あるいはこの意識は中年からずっと続くものなのか。きっと後者の方なのではないか、と思う。
言葉だけ見ると寂しい感じがしてしまうが、要するにもうジタバタしても仕方がないので、意外にこういうことを味わっていられるのも事実だ。
私はとにかくジタバタするのではなく、現状を肯定することにしている。その中で寂しさ、むなしさ、苦笑を楽しむことにしている。
本の内容はそれほど面白いとは思わなかったけど、荻原さんの本はいつも今度読んでみたいなと思う本がある。それだから荻原さんの本をずっと読み続けている。今回も数人の未読作家さんが気になり、ちょっと図書館で借りて読んでみようかと思っている。
荻原 魚雷 著 『中年の本棚』 紀伊國屋書店(2020/08発売)