2018年 06月 03日 ( 1 )

伊集院 静 著 『 三年坂 (新装版)』

d0331556_19484843.jpg
 この文庫本を読んだのは、『なぎさホテル』で、ホテルに滞在中に、伊集院さんが少しずつ回復し、小説をまた書き始めたことが書かれていた。それを読んでみたいと思ったのだ。
 「三年坂」「皐月」「チヌの月」「水澄」「春のうららの」の五編が収録されている。
 伊集院さん自ら書いているあとがきに、

 五編の小説を読み返してみて、雨や水が多く登場していた。それが自分が生きて、見てきた時間や風景とは無関係とは思えない気がした。

 確かにここに収録されている作品は水が関わっている。それが伊集院さんの記憶に残る悲しい記憶の日が雨が多かった。恩師の色川武大さんが亡くなった日は雨だったという。さらに伊集院さんが度々書かれる弟さんが海難事故で亡くなった日も雨だった。さらに夏目雅子さんが亡くなった朝も病室の外は秋の雨で濡れていたという。
 この五編のうち、私は「水澄」が好きだ。

 そうだな、危険なことは避けなくちゃいけなかったんだ。子供にだってわかり切ったことが、自分にはわかっていなかったことを、男は雨のマウンドで言われたことに気づいた。野球につまづいてから、男はわざと危険な場所を選んで生きてきたように思った。

 人間窮地に陥った時、なぜか悪い方向へ舵を切ってしまう。元のところに戻れるきっかけがなかなかつかめず、苦しむ。けれど何げないきっかけが必ずどこかにあるのことも事実で、それを待てるか。そして取り逃さないことができるか。そこにかかっている。

伊集院 静 著 『 三年坂 (新装版)』 講談社(2011/11発売) 講談社文庫


by office_kmoto | 2018-06-03 19:50 | 本を思う | Comments(0)

言葉拾い、残夢整理、あれこれ


by office_kmoto
プロフィールを見る
画像一覧
通知を受け取る