2018年 11月 16日 ( 1 )

片岡 義男 著 『くわえ煙草とカレーライス』

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 片岡義男さんの本は先日読んだエッセイがはじめてで、今回はじめて小説を読んでみた。
 私が本屋で働いていた70年代片岡さんの文庫はよく売れた。あの文庫本たちはちょっとおしゃれで、ファッショナブルな装丁であった。表紙によく南洋の海岸風景の写真がよく使われていた。いかにも若い男女が手にしそうで、書名もそれなりに若者受けするものであった。私はこういうのは駄目で、売ってはいたけれど、読む気はなかった。だからこの歳になって片岡義男さんの本を読むとはちょっと不思議な気分である。
 巻末にある片岡さんの年譜を見ると1939年生まれとなっているから、今年79歳となるはずだ。だからかここにある短編集は、それこそ「オーソン・ウェルズが日本のウィスキーのCMに出演していた」四十年前から何十年ぶりに、「私鉄の沿線の商店街で男と女がばったり会って」、昔どこでもあった喫茶店で、“あの時”“あの頃”を語る場面が多い。
 たぶんこれまで生きてきた年数が残されている年数より圧倒的に多いためそうなるのだろう。このあたりは自分もきっと同じような会話をしてしまうだろうなとは思う。なぜなら自分も同じように歳をとっているから。
 ストーリーでの出会い方が余りにも場当たり的な感じが拭えなかった。いかに出会いというものが突発的で偶然なものであるとしても、それを前提で話が組み立てられているのは鼻白む。話される内容も特段何があるわけじゃない。ただの思い出話だ。こういうのってその雰囲気を味わえばいいのだろうか?私はどう読んでいいのか、戸惑いながら読み終えることになってしまった。
 ただまったくここにある短編の雰囲気について行けないわけではない。ひとつ懐かしいな、と思えるのは、昔どこの街にもあった喫茶店で出されるカレーライスである。あるいはピラフ、ナポリタンやミートソースなど、腹持ちする食べ物が懐かしい。それは思い出でコーティングされてしまったところがあるにしても美味しかった。それぞれ独特の味があったと思う。
 今でも珈琲館ではサンドイッチ以外にカレーなど食べられるけれど、それほど美味しいと思えないのは何故だろう。妙に味が洗練されしまっている。多分どこの珈琲館でも同じ味のカレーが出て来るのだろうと思える。店独自のオリジナリティー(悪く言えば泥臭さ)がそこにはない。店独特の味つけがあった。ライスにしても妙に硬かったり、パスタが茹でられて時間が経ったのだろう、ふにゃけた感じも今となれば懐かしい。
 そんな懐かしい軽食を出してくれた、思い出の喫茶店を書き出してみたいと思ったりして、ふとそんな喫茶店を頭のなか思い出し、数えてみたりした。
 今回は話の内容にこれといって心に残るものがなかったので、本の内容とはそれほど関係ないことを書いてしまった。

片岡 義男 著 『くわえ煙草とカレーライス』河出書房新社(2018/06発売)


by office_kmoto | 2018-11-16 06:14 | 本を思う | Comments(0)

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